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赤沢森林鉄道 (あかざわ-しんりんてつどう)は、長野県木曽郡上松町小川の「赤沢自然休養林」にて復元された森林鉄道。
赤沢森林鉄道がある赤沢自然休養林は、江戸時代に尾張藩が森林保護したため、樹齢300年を超える木曽ヒノキの天然林が広がっている。
伊勢神宮などの御神木を産出している日本三大美林のひとつで、森林浴発祥の地ともされる山の中。
ただし、中部森林管理局が運営・管理する公共施設であり、トイレも最新型でとてもキレイ。
女性でも気兼ねなく楽しめる自然豊かな場所と言える。
こんな山奥なのにランチが取れるレストランやちょっとした土産物店も平日営業している。
森林鉄道とは
森林鉄道とは、山の中で伐採した材木を運搬するために鉄道を敷いたもの。
明治の頃まで多くは「川」の流れを利用して木材を流していた。
しかし、大正時代には水力発電用のためのダムが増えてきたことから、川を利用できなくなった。
そのため、木材の運搬手段として森林鉄道が敷設されてきた経緯がある。
営林署が中心となって建設した線路のため、森林鉄道の軌間は 762mm が基本となっている。
木曽森林鉄道としては、1916年(大正5年)に上松~赤沢間の小川線(小川森林鉄道)が一番最初に開業した。
以降、王滝線、阿寺線、小木曽線、西野川線などつぎつぎとレールが敷かている。
沢と言う沢沿いに森林鉄道の支線が設けられたと言っても過言ではない。
このように木材運搬を目的に、険しい山岳に設けられた鉄道は日本独特のものとも言ってもよいだろう。
日本が台湾に建設し、現在は距離70kmの観光鉄道となっている阿里山森林鉄路などもあるが、森林鉄道があるのは世界的に見てもかなり珍しく大変貴重だと言える。
しかし、日本の山岳地に築かれた森林鉄道も、道路が整備されてトラックの性能も良くなると、次第に消滅した。
赤沢森林鉄道
全国で活躍した営林局・森林鉄道のうち、本州で最後まで現役だった木曽森林鉄道のごく一部が赤沢森林鉄道になる。
軌道の幅は762mmの「狭軌」ナローゲージ。
木曽森林鉄道だけで、最盛期は幹線・支線併せて57路線、総延長は428kmを数え、作業軌道を入れると500km以上とも。
また、蒸気機関車が導入された日本最初の森林鉄道でもあったようだ。
現在、赤沢森林鉄道として運行されている区間は2.2kmなので、僅か0.5%の区間しか残っていないと言えるが、現在、乗車できるだけでもかなり貴重な体験と言える。
1975年、木曽森林鉄道は廃止。
その後、1985年(昭和60年)、伊勢神宮の建材として木曽ヒノキを切り出した際に、森林鉄道を復活させて運搬したのが、テレビ放送されて話題となった。
そのため、観光目的のため森林鉄道復活の機運が高まり、1987年から往復乗車体験が可能となった動態保存の森林鉄道となっている。
赤沢支線のうち丸山渡線・ウルシ沢線が再現保存区間として復活しており、乗車できる森林鉄道は片道1.17kmの区間をDL列車が往復運転する。
現在の機関車は、1996年北陸重機工業製の新造ディーゼル機関車AFT01がけん引・往復。
最大5両のボギー・有蓋トロッコ客車をけん引し、カントも緩和曲線もあるコーナーの連続した渓流沿いの線路を、時速7km程度の低速でゆっくり走行する。
客車のひのき号の丸山渡側、さわら号・あすなろ号の記念館側デッキには、非常ブレーキ弁が設けられており、それぞれ乗務員さんが乗車して対応する。
終点の丸山渡停車駅に到着すると、約5分間の停車時間があり、その間、渓流などに下車することが可能。
なお、機関車は前後入替のため、短時間のうちに、入り代え線(機回し線)を利用して移動する。
昔、機回し線は無かったようで、あとからもう1両のDL機関車がついてきていたようだ。
そのため、行きはDLかせ後ろ向き走行し、帰りの復路(下り坂)は前向きで運転することになっている。
往復で所要時間は25分だ。
なお、現在走行する線路は、かつて小川森林鉄道・南股支線と呼ばれた線路の赤沢線だったようだが、今では赤沢停車場から出発すると言うこともあり、赤沢森林鉄道と呼ばれている。
ちなみに、本物の森林鉄道時代の赤沢停車場は、川沿いの低いところ(駐車場付近)にあったそうだ。
下記は、駐車場から赤沢森林鉄道の駅への入口。
駐車場から階段またはスロープ(道路)を少し1分~2分ほど登ると、下記のような駅舎があり、キップを購入できる。
赤沢森林鉄道の運行(営業)は4月末のゴールデンウィーク頃から11月上旬頃まで。
冬季は、凍結・積雪のため運休となる。
なお、基本的には平日も運行しているが、年に数回程度、軌道整備のための全面運休日があるので、その年の運行カレンダーをよく確認して訪問願いたい。
また、悪天候、車両故障でも臨時運休することがあるらしい。
ただし、機関車は予備もある2両体制のようだ。
なお、2021年8月には、赤沢自然休養林の園地内にて「クマ」さんが出没し、5日間、臨時休園になった。
このように熊出没で休みになることもあるので、出発当日も、最新情報を確認することをお勧めしたい。
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赤沢森林鉄道が走行する呑曇淵(ドンドンブチ)沿いには、ふれあいの道(往復2.8km)と名付けられている舗装済みの遊歩道があり、木橋・木道なども綺麗に整備されている。
段差がないので、車椅子や足に自信のない方でも、散策して気軽に森林浴を楽しむことができる。
例えば、行き(緩やかな登り)だけ森林鉄道に乗車して、折り返しの丸山渡停車駅に着いたら帰りの乗車は放棄し、木道を歩いて帰ってくることもできる。(差額返金はない)
帰り歩くとゆっくり目で約30分の徒歩といったところか?
また、森林鉄道も、乗り場までは坂道があるが、クルマ椅子でも乗車できるスペースがある。
車椅子は無理になるが、他にも散策路がいくつか整備されている。
まさに「森林浴」を行う場所なのだ。
お弁当持参でのハイキングも良いらしい。
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200年後の森林形成を目指した保護管理などの理由からペットは自粛して欲しいと言う事で、実質的にペット(ワンちゃん)不可。
クマ出没は注意。
また森林保護のため火気厳禁。
赤沢森林鉄道の動画も撮影してみたのでよければご覧頂きたい。
そうそう、駐車場脇の川だが、夏は「川遊び」ができるようなので、お子様は着替えとタオル持参で。
ただし、標高も高いので、川の水は冷たいです。
ボールドウィン蒸気機関車
森林鉄道の乗車駅となる赤沢停車場には、車庫もあり隣りには「森林鉄道記念館」と言う資料館も併設されている。
森林鉄道記念館は入場無料で、車庫内の見学もできるようになっている。
また、車庫近くにはいくつかの車両も静態保存されている。
ボールドウィン蒸気機関車(10t・B1リアタンク型)は、木曽森林鉄道で14両が活躍していたようだ。
独特な車輪配置なのがわかる。
しかし、燃焼効率が約7%と悪いSLだったため、早い段階からディーゼル機関車に置換され、1960年(昭和35年)の段階で残っていた3両が保存されていた。
<注釈> 7両は太平洋戦争での鉄供出になった。
残っていた3両のうち2両は、現在アメリカが引き取り、カリフォルニア州の交通博物館にて動態保存されているらしい。
赤沢森林鉄道にあるのは、ボールドウィン1号機になる。
煙突がおもしろい形状なのは、火の粉による森林火災防止のため、試行錯誤され遠心分離式の煙突になった結果であり、他の森林鉄道で運用されていた蒸気機関車も似たような煙突が多い。
鉄道模型のナローゲージとしても発売されている。
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下記は、酒井工作所製C4型10t機。
7輛が導入されたが、赤沢で保存されているNo.122であり、トップナンバーと言える。
DBT10は、当時の流行の湘南型前面になっている。
下記は、10t B-B型ボギーディーゼル機関車。
下記は、特別展望客車(貴賓車)。
木曽森林鉄道では、山の中に住む従業員の家族、沿線の住民などのために「旅客列車」としての運行もあったので小型の客車もある。
ただし、運賃は取らず無料だったので、何か事故があっても鉄道運送法の責任は負わないと言う事になっていたとの事。
なお、この貴賓車は、1957年に皇太子殿下が赤沢神宮備林行幸した際に製造した特別客車となる。
下記写真の右側は、酒井工作所・大型モーターカー(GB1.5)。
左側は上松運輸営林署・理髪車。
理髪車は、移動式の鉄道床屋さんと言う感じで、小型B型客車が転用されている。
なかなか街に出れない作業員の髪の毛を切りに、床屋さんの仕事場となっており、小型の洗面台や蒸しタオル用のスチーマーまで設置されていた。
下記は小型モーターカー(岩崎レール工業)で、保線や視察など少人数の移動に使われた。
他には木曽・御岳山の麓にある松原スポーツ公園でも、りんてつ倶楽部さんによって王滝森林鉄道復元軌道として森林鉄道が動態復元されているらしい。
ただし、予算不足もあり定期運転ではないようなので、やはり赤沢森林鉄道が最適といったところか?
かつての王滝森林鉄道では、営林署職員の通勤専用列車「おんたけ号」、住民のための「みどり号」、上松~三浦~本谷間の「みやま号」、滝越地区の児童を王滝小学校・中学校に通学させるスクール列車「やまばと号」などがあった。
なお、民間として日本で唯一現役で稼働している森林鉄道が、安房森林軌道(あんぼうしんりんきどう)と言い、屋久島にある。
交通アクセス
赤沢森林鉄道(赤沢自然休養林)への行き方だが、木曾の山の中と言う事で遠い・・・。
ただし、アクセス道路はほぼ1本道。
標高1100mの山奥なので酷道を想像していたが、どうやら、かつて線路が敷かれていた小川森林鉄道の路面を道路に改良したようだ。
そのため、カーブも鉄道用のカーブのため、比較的緩くて見通しも良く運転しやすい。
道路の車線も1.8車線程度はあり、すれ違いで困るような場面はほとんど感じなかった。
駐車場は、施設の入場料のようなものとなっており有料。
このように道路が比較的良好なので、JR東海の木曽福島駅・上松駅(あげまつえき) からも、赤沢行きのバスが運行されていて、とても訪問しやすい山奥である。
ただし、バス(赤沢線)は本数が少ないので注意。
赤沢から木曽福島駅間は所要45分。
バス乗車前に、駅案内所などで購入すれば往復割引もある。
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場所は当方のオリジナル名古屋方面地図にてポイントしている。
スマホで表示して、目的地として選択し「ナビ開始」にすれば、カーナビ代わりにもなる。
自動車用、歩行用でも、ナビとしてお使い頂ける。
お気をつけて訪問して頂きたい。
木曽谷の紅葉時期は10月下旬から11月上旬になる。
小生の場合、高速を使っても自宅から約4時間30分の距離。
これまでなかなかチャンスが無かったが、ようやく訪問できた次第である。
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