SL大樹の解説 東武鉄道鬼怒川線 転車台などの楽しみ方

SL大樹 東武鉄道鬼怒川線

東武鉄道は観光列車「SL大樹」として、2017年8月、東武鬼怒川線で約半世紀ぶりにSL運転を復活させました。
東武・鬼怒川線の下今市駅~鬼怒川温泉駅の12.4kmを、C11蒸気機関車が、約35分掛けて走ります。
なお、C11 207の故障・検査時には通常補機を務めるDE10ディーゼル機関車による単独牽引で、DL「大樹」として運行されダイヤもあります。
1日4便体制になった場合、鬼怒川温泉駅12時54分発のDL大樹4号と、逆側の下今市駅13時ちょうど発のSL大樹5号は、途中交換駅で行き違い(交換)をするとの事です。

C11 207

C11蒸気機関車は、全長12.65メートル、高さ3.9メートル、重量は約55トン、動輪直径は1.52メートルのタンク式蒸気機関車で、日本で381両が製造されました。

SL大樹 C11 207

C11型蒸気機関車の207号機(C11 207)は、戦前の1941年に製造されたSLで、北海道で運用されていました。
1974年に廃車となったあとは、静内の山手公園にて静態保存されています。
その後、2000年にJR北海道に返還されると、修復を受けて、「SLニセコ号」として復活を果たしました。
ただし、動輪軸受の異常発熱など、あまり調子よくなかったため、C11 171の予備機と言う存在になり、2014年まで臨時列車などで活躍しています。
その後、東京の東武鉄道がJR北海道からレンタルを受けることになり、札幌の苗穂工場にて全般検査を行ったあと、新設された東武の南栗橋SL検修庫へ運ばれました。
そして、2017年より、東武鬼怒川線の下今市 – 鬼怒川温泉間で運行開始したのが「SL大樹」(たいじゅ)と言う事になります。

SL大樹

C11蒸気機関車は、比較的小型で設計も古いことから、発電力も低く、新型のATSの増設や、電力消費が大きいデジタル無線機の設置などが難しいところがあります。
そのため、東武では、SLの後ろに連結させる車掌車に電源装置とATS本体(自動列車停止装置)を乗せることで、解決しています。
よって、東武のC11は、ヨ8000形の車掌車と連結した状態で無いと、運行できないとも言えます。

SL大樹とヨ8000

電力供給は、極端な話、客車にパンタグラフでもつければ、架線から供給できますが、当然のように、昔のスタイルを維持しています。
連結する14系客車の床下にディーゼル発電機を設置し、ヨ8000形に供給する方式となっています。
なお、前照灯(ヘッドライト)ですが、濃霧も多い区間を走る安全上の理由から、従来の位置ではなく、左右に分けて2つのライト(後ろ側も同様)がセットされているのが、外観としては大きな特徴になります。

車掌車ヨ8000形

JR西日本の後藤総合車両所にあったヨ8709と、JR貨物のヨ8634の2両が、2016年に東武鉄道に譲渡され、東武ではSL大樹用な、車掌車ヨ8000形が2両、動態保存されています。
前述したとおり、東武用のATS装置などが取りつけられました。

車掌車ヨ8000形

機関車とは別の車両(車掌車ヨ8000形)のヨ8634とヨ8709に電源装置などの本体装置一式を、同機には運転室内に同ATSの車内警報表示機をそれぞれ搭載しており、さらに後部連結面にYL11-96-2形ジャンパ連結器を増設して、両車に搭載されているATS装置同士を接続させて専用ATSを作動させる方式を採用。このため、同鉄道にて本線走行をする時には、ヨ8000形を後部に連結していなければならない。

転車台(ターンテーブル)

下今市駅(しもいまいち)の転車台は、JR西日本・長門市駅の構内にある国鉄長門機関区で使用されていた転車台が移設されました。

下今市駅の転車台

鬼怒川温泉駅(きぬがわおんせん)の転車台は、JR西日本・三次駅構内にある国鉄芸備線管理所(三次機関区)で使用されていた転車台(ターンテーブル)が使われています。

鬼怒川温泉駅の転車台

なお、下今市機関区には、SL見学エリアとして「SL展示館・転車台広場」がオープンしています。
その転車台広場では、C11、DE10などの構内入換や転向を間近で見学可能です。

SL展示館・転車台広場

見学エリアには、下今市駅の中からしか入れませんので、東武線の切符(乗車券)を持っている状態か、入場券を購入しての見学となります。

それぞれの、転車台にSLが入ってくる予定時間は、公式サイトにて公開されています。

SL大樹をより楽しむ方法

SL大樹にただ乗車するだけでなく、色々と楽しみ方や写真撮影などのポイントを明記してみます。

まず、下今市駅でSL大樹に乗車する前には、SL大樹がホームに入ってくるまで、色々と準備などがホームから見えるところで行われます。
見学する場合には、3・4番線ホームに一旦降りると、写真撮影も行いやすいです。
出発時間の30分以上前に到着していれば、ホームから、機関車と客車の連結風景などを見学可能です。
もっと早く行けば、扇形機関庫からターンテープに出て来る瞬間にも立ち会えます。

SL大樹

鬼怒川温泉駅に到着しましたら、すぐに改札口を出ないほうが良いです。
改札を出ずにホームで待っていると、まず、SLと客車の切り離しが行われて、SLが前進して行きます。
そのあと、蒸気機関車は、2番線ホームに「バック走行」で戻ってきます。

そして、トップ写真のように、客車の脇にて、一旦停止します。
これは、恐らく、撮影してもらえるように、わざわざ停車しているものと推測しますので、サービス精神旺盛です。
その撮影が終わりましたら、転車台に移動しましょう。
鬼怒川温泉駅のターンテーブルは、駅を出たところにありますので、すぐにわかります。
転車台の撮影ポジションは、駅舎側から撮影しますと、蒸気機関車がクルッと周る際に、SL正面からも撮影できます。
人吉転車台などでは、サービスで、グルッと1周してくれるのですが、東武鉄道は半周が基本です。
この転車台は、切符を持っていなくても、外ですので、自由に見学・撮影ができます。

折り返しのSL大樹に乗車する場合や、鬼怒川温泉駅から下今市に向かうSL大樹に乗車する場合、SLが方向転換して戻って行きましたら、トイレ休憩などをして、速めに改札を通ってホームに行きましょう。
客車がホームに止まっていますが、まず最初にDE10が後方に連結します。
そのあと、C11が前方に連結します。
乗車ホームよりは、反対側のホーム(1・2番線)から撮影すると、連結シーンもよく撮れるかと存じます。

SL大樹が下今市駅に到着したあとも、同様に、切り離し(解結)が行われて、点検のため、C11が転車台に入って、扇形機関庫に入ります。
下今市の駅ホームから階段で上がって、北側に歩いて行きますと「SL展示館」「SL転車台広場」へ抜けられます。(乗車券を所有しているか、入場券が無いと入れません。)
そして、下今市転車台に入ってくるシーンなどを撮影できると良いです。

江若鉄道 C11 1

東武鉄道では、2機目のC11として、北海道の個人が所有していた、江若鉄道 C11 1を、2018年に入手し、復元しました。

この江若鉄道C11の1号機(C11 1)は、1947年(昭和22年)に滋賀県・江若(こうじゃく)鉄道が発注し、日本車輌製造にて製造されたC11型蒸気機関車「江若鉄道C11の1号機」という機関車になります。
江若鉄道は、琵琶湖の西岸にある大津市の浜大津駅から、高島市の近江今津駅を結んでいましたが、1969年に廃線になっています。

江若鉄道C11 1は、1957年(昭和32年)に北海道・雄別炭礦鉄道へ譲渡され、1970年(昭和45年)には北海道・釧路開発埠頭でも石油輸送にて活躍していました。
その後、1975年(昭和50年)に廃車となり、北海道の個人が静態保存していたものです。


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北海道江別市でトレーラーに積みこまれ、北海道苫小牧港まで陸路で移動しています。
そして、苫小牧港から茨城県の大洗港までフェリーにて海路輸送され、大洗港から東武の南栗橋SL検修庫(埼玉県久喜市)まで、約7日間かけて輸送されました。
修復箇所が当初の想定より多く、修理完了目途が2020年冬から2021年冬に延期されています。

C11 325

真岡鐵道で運行していた「C11 325」が、資金難から車検費用を捻出できず、2019年3月、東武鉄道が約1億2000万円で落札したSLとなります。
その後、JR東日本の大宮総合車両センターにて中間検査Aが行われており、2020年7月頃に検査終了となる予定です。
東武に引き渡されますと、東武鉄道のSL大樹としてはC11が3機体制となります。
そのため、下今市の扇形機関庫も増設工事が行われて、SL3機収容できる状態となりました。

下今市駅転車台と機関庫

今後は、SL大樹による4往復運行や、東武日光駅への運転も計画しているようです。
点検が完了し、2020年7月30日、東武鉄道の南栗橋車両管区に入線しました。
2020年12月から営業運転を開始する予定となっています。
先行して、C11 207 が、10月3日、SL大樹「ふたら」として初めて乗客を乗せて、栃木県日光市の東武日光駅に乗り入れたとの事です。

運行ダイヤ

運行ダイヤ・時刻表は、通常、金土日月・祝を中心とした運転になっており、毎日ではありません。
なお「SL」大樹とあるのが、蒸気機関車による運行です。
「DL」大樹になっているのは、ディーゼル機関車DE10型による運転で、SLではありませんので、その違いにご注意願います。

時刻表は、変更される場合がありますので、下記の公式サイトにてご確認頂けますと幸いです。

SL大樹の最新運転日と時刻表

新宿駅や浅草駅から、朝早い特急に乗れば、下今市駅でSL大樹に接続しています。

SL大樹予約方法

SL大樹は「乗車券」(PASMO可能)と「指定席券」(予約制)にて、乗車可能です。
料金的には執筆時点で座席指定料760円、乗車券260円で、片道合計1020円(税込)となります。

SL大樹「公式予約サイト」

空制状況だけの確認も、上記から可能です。

乗車日の1ヶ月前の午前9時から購入可能で、東武の「SL大樹予約サイト」から、インターネット上にて予約・購入することが可能です。
座席があいていれば、発車時間の5分前まで、スマホからでもインターネットの東武予約サイトに接続して、クレジットカード精算し、指定席券を購入できます。

予約時には「予約」と「購入」と言うのがあります。
予約を選択した場合には、座席の場所を事前に選べませんので「購入」を選択して、好きな座席を選ぶことをオススメ致します。
購入完了メールが届きますので、そのメール画面を見せるか、事前にプリンターで印刷することで、SL乗車時の指定席券代わりになります。(チケットレス)


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乗車券の部分は、別途購入です。
当日、駅の券売機で目的地までの乗車券を買っても良いですし、PASMO・スイカなどの交通ICカードでも、そのまま有効です。
ただし、野岩鉄道と会津鉄道方面は、駅の改札(ワンマン運転)が交通ICに対応していないので、紙の乗車券でないといけません。
なお、本人確認を求められる場合があるため、乗車時には購入時に使用したクレジットカードを携帯してください。
購入後の予約変更は、1回まで無料です。(発車時刻以降は、変更・払い戻しはできません。)
2回目からは、キャンセル(払い戻し)扱いとなり、1席につき100円の払い戻し手数料がかかります。
人数が減る場合も、1席100円の手数料が必要です。

ちなみに、女性のアテンダントさんは、東武鉄道の社員ではなく、日光市観光協会による嘱託となっていますが、もちろん、安全運行を第一にサポートしてくださります。

まるごと日光・鬼怒川 東武フリーパス

乗車券の部分ですが、鬼怒川温泉駅に行ったあと、下今市駅に戻って、東武・日光駅へ行くなど、日光と鬼怒川を観光する場合、東武の「まるごと日光・鬼怒川東武フリーパス」などを、乗車券部分で使用すると、割引になったり、お店での買い物などの割引クーポンもついています。

当方が訪問した際の実際の行程

2020年、新型コロナウイルスにて、運行が中止されていたものが、再会された7月4日のSL大樹1号に合わせて、訪れてみました。
本来であれば、新宿駅からの「特急日光1号」にて、下今市まで行きたかったのですが、感染防止対策として、電車に乗る時間を短くするため、クルマで向かっています。

下今市駅

なお、宇都宮などに用事もあったため、車は、新鹿沼駅近くのコインパーキングに止めて、新鹿沼~下今市間だけ、東武線を追加利用しました。
SL大樹は、下今市 ・ 鬼怒川温泉へ乗車して、鬼怒川温泉駅での転車台を見学。
帰りは駅弁を購入して、鬼怒川温泉 からSL大樹2号で、下今市まで戻りました。
そして、下今市の下今市機関区を見学して、特急リバティ、新鹿沼駅に戻るパターンでSL大樹の往復利用をさせて頂きました。
特急を利用したのは、普通列車のダイヤが悪かったためです。

しかし、C11が動いているのを見ますと、やはり、真岡鉄道や大井川鉄道にも、また行きたくなってしまいます。
と言う事で、新型コロナの様子をみながら、2年以内に訪れたいと思います。


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ちなみに、SL大樹ですが、将来的には、野岩鉄道と会津鉄道を経由して、福島の会津若松まで、SLを走らせたいと言う構想があるとの事です。
こちらも、大変、楽しみですね。

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