横浜市営地下鉄ブルーライン(1号線)の下飯田駅(しもいいだ-えき)付近にて、2019年6月6日発生した脱線事故。
湘南台発、あざみ野行きの「始発電車」と聞いたときに「こりゃ、夜間の保線が関係した事故かも?」との予感がありましたが、やはりそうでした。
私も、たまーに、年に1回程度、他の鉄道ですが、始発電車に乗車することがあります。
そのとき、夜の間に、もし、線路上になにか障害物でもあったときには、どうなるんだろう?と考えたことがあります。
始発が運行されたあとでしたらそんな心配は軽減されますが、特に、新幹線の始発に乗車したときには、リスクがあるように感じていました。
ただし、新幹線の場合は夜間保守が終わったあと「確認車両」を1度走らせて、線路に問題が無いか確認してから営業運転に入るとのことです。
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今回、横浜市営地下鉄の脱線原因は「横取り装置」と呼ばれる、工事用車両を本線上に移動させるために、レールに設置する装置が残されていて車両が乗り上げた結果、脱線したと発表がありました。
やはり、線路上の障害物によって、始発電車が事故を起こしたと言う事です。
しかし、それが、本来、電車の安全を守る立場の保守作業員が起因した事故だとわかり、正直、とても残念に感じました。
横取り装置と言うものは、レールの本線と、脇にある保守用の側線との分岐部分(ポイント)「乗り上げポイント」にかぶせて使用して、保守車両を本線に移動させるための装置です。
下記は、地下鉄で使用している線路ではありませんが、だいたい、構造的な部分は同じです。
通常の線路は、電気などでポイントを遠隔操作(動作)させますが、このようにたまにしか使わない分岐は、レバーや操作装置にてポイントが切り替わる状態になっていません。
理由としては、普段、あまり使わないので、これを通常のポイントにしていますと、列車の乗り心地が悪くなるなどの理由もあります。
そのため、保守作業を行う場合だけ、レールの上に、かぶせるようにして、横取り装置と言うレールを設置して渡り線にし、ゆっくりとして超低速にて工事車両を本線に移動させるのです。
下記が、横取り装置と言うレールを分岐部分にかぶせた状態を示す例です。
当時は深夜1時30分から3時45分ごろまで、作業員3人が線路上で点検作業をしていたとの事です。
もちろん、工事が終って、保守車両を保守線に戻したあとには、設置していた横取り装置を本線上から撤去する必要性があります。
基本的には工事・保守を担当した者が撤去し、撤去を現場リーダー(監督)に報告し、最後にリーダーが実際に撤去されていることを目視で確認すると言うマニュアルになっているものと推測致します。
ところが、工事担当が撤去を忘れ、リーダーも撤去確認を忘れた、撤去したと思い込んだと言えるでしょう。
装置が線路上にあることを知らせる警告灯やブザーも止めました。
警報装置は、横取り装置をそこに設置している間に、ずっと稼働させておくもので、赤色回転灯とブザーが鳴っている状態になります。
よって、電車の運転者も、その赤い回転灯が見えれば、事前にブレーキを掛けられたかもしれません。
しかし、今回の事故では、現場での作業が終了した際に、先に警報装置を切ってしまった模様です。
そのため、現場の作業員や監督らは、既に横取り装置が撤去されていると思い込んだ形になってしまったようです。
ある意味、仲間を信用していたゆえの事故だと言えるでしょう。
そして、始発電車が、横取り装置に乗り上げました。
運転手は強い衝撃を受けため、ただちに非常停車させたようですが、それでも止まったのは40m先だったようです。(下飯田駅から約150メートル走行した地点)
幸いにも、駅から発車直後で時速35km程度だったため、脱線するなどしてトンネル側壁に車両が接触するような大きな事故までには発展しませんでした。
このような人為的なミスによる事故は、横浜市営地下鉄以外の路線でも、当然、発生する可能性があります。
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昨今、鉄道事故ではありませんが、高齢者が自動車を運転することによる大きな事故や、大津で幼い保育園児が命を落とした痛ましい交通事故などが目立っていますが、いずれも人為的なミスが要因かと存じます。
先般発生した、第三セクターで新交通システムである「横浜シーサイドライン」が新杉田駅で逆走した事故は、車両の信号を送る線が、断線していて正しく情報が伝わらなかったと言うことですが、横浜市営地下鉄の事故はあきらかに人間のミスです。
人為的ミスを防ぎ安全運行を行うため、公共交通事業者は、日々、厳しいルールをもうけているはずです。
しかし、2重チェックも機能しなかったと言う事は、正直、いつも適当な仕事をしていて、安全意識が欠落していたとしか言いようがありません。
6両編成のうち、5両が脱線したと言うのは、脱線事故としては、非常に大きな部類です。
たまたま、始発で乗客も約100名と、そんなに多くなく、男性運転士が軽傷し、乗客の女性が肩の打撲との事ですので、重傷・死者がいなかったことは不幸中の幸いです。
もし、満員の状態でしたら、もっとケガ人も多かったことでしょう。
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私も含めて、移動を伴う運転時などには、本当により一層の注意をしなくてはならないと強く感じました。
ただし、安全を優先しすぎて、制限速度より大幅に低い速度で走行するなどは、逆に迷惑をかけることがありますので愚の骨頂だと思いますが、より注意を払うなど安全第一で参りたいところです。
・小田急「踏切衝突事故」乗用車と衝突して脱線した詳細状況
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