北陸新幹線10編成水没&脱線し廃車に 2019年10月台風19号被害

北陸新幹線が水没

JR東日本の北陸新幹線車両基地である長野県長野市赤沼の「長野新幹線車両センター」が、2019年10月22日夜、千曲川の河川堤防決壊により水没しました。

JR西日本よりますと、台風19号が通過したあとに安全確認を行った結果、設備の損傷が見つかり、修繕に相当な時間を要するとの事です。
そのため北陸新幹線の「かがやき号」「はくたか号」は終日運休となり、富山駅~金沢駅間にて「つるぎ号」のみ、通常ダイヤにて運転を行っております。

北陸新幹線は、東京駅~上越妙高駅間は東日本旅客鉄道(JR東日本)で、上越妙高駅~金沢駅間は西日本旅客鉄道(JR西日本)により運営されています。
そして、北陸新幹線用の車両は、JR東日本の所有がE7系のF編成と、JR西日本所有のW7系のW編成の合計30編成にて運行しています。
なお、JR東日本所有車がE7系、JR西日本所有車はW7系となっていますが、車両は同型車両で、仕様に差異はありません。
このように、北陸新幹線は、合計で24編成、288両になっており、常時2編成程度が整備・メンテナンスになっている模様です。
検査の内容としては、だいたい2日に1回の仕業(しぎょう)検査があり、車両の走行距離が3万kmまたは30日以内(1ヶ月に1度)に実施する交番検査の2種類があります。



そのうち、長野新幹線車両センターに夜間停車していたE7系・W7系新幹線10編成(E7系8本、W7系2本)が水没すると言う浸水被害となりました。
新幹線車両側面にある金色のライン近くまで水没している状態です。
最大時で160cm程度の水かさになった模様です。
そのうち、1編成は水に浮いたようで、移動しており、うち2両が脱線しました。
10編成が被害にあったと言う事は、30編成中、33%(120両)が、すぐに使えなくなったと言う事になります。
屋外留置の7編成と、車庫内の3編成になります。
最強の耐雪性能を誇る新幹線でしたが、意外にも水害にて大きな被害を受けることになりました。
車両センターが建設された当時はハザードマップが存在していなかったと言います。

すぐに点検・修理を行いたいところですが、まずは長野の車両基地の水が引かない事には、新幹線のそばに近づくことすらできません。
また、車両基地じたいが水没したため、メンテナンス用の機械類・設備類も、故障などしていることが考えられます。
それら、センターの復旧作業が伴います。

ただでさえ、時速260kmと高速で走行する北陸新幹線です。
床下にあるモーター、制御機器、発電機、信号機器、ブレーキ系統、高圧機器、電気配線など、すべて交換する必要がでてくるものと推測致します。
新幹線など鉄道車両では値段の半分は電気機器の代金です。
しかも、大規模な修理ができる設備は、JR東日本の場合、宮城県利府町にある新幹線総合車両センターでしか対応ができません。
120両はいずれも自力走行が不可能と推測されますが、けん引する機関車のようなものは、新幹線にはありません。
もし、宮城県まで持って行くとしたら、1両ごとに大型トレーラー(トラック)に搭載して、300kmもの距離を、陸上輸送するしかなく、輸送費も莫大です。
床上まで浸水していた場合には、空調の配線や座席などの交換も必要になると言う場合、故障や事故防止のためにも、廃車にして新造したほうが安い場合が考えられます。
※約3週間後、水没した全車両の廃車手続きが正式に発表されました。

北陸新幹線の車両を新造すると、1編成12両を製造するのには約32億8000万円掛かっていましたが、消費税も値上げされていますので、もう少し高くなりそうです。
もちろん、在庫がある訳でもなく、すぐに生産できるものでもありません。
車両製造メーカーの生産ラインでは、現在、上越新幹線用の製造も行っていますので、それが完成したあとに新造となります。
増して10編成分(120両)となると、全部揃うのに、メーカーが頑張って1年6ヶ月、通常であれば2年6ヶ月程度は要します。
なおかつ、JR東日本は、被害を受けたJR西日本の車両を補償しなければならない恐れがあります。
JR東日本では、災害時に備えて損害保険に入っていますが、車両損傷の保険金は少しだけだと言います。

もちろん、長野車両センターが100%復旧できないと、その間、新幹線の通常整備すら、満足にできませんので、無事だった新幹線の運用できる本数にも支障がでてきます。

冠水らずに無事だった20編成も、前述したとおり、定期的に整備・点検を行いながら、ローテーションで使用する必要がありますので、毎日、20編成を動かせると言う事にはなりません。
東京都北区にあるJR東日本の東京新幹線車両センター、石川県白山市にあるJR西日本の白山総合車両所でも、北陸新幹線の車両の検査が可能ではありますが、通常の新幹線の検査を毎日行っていますので、設備・人材に余裕がある訳ではありません。
もし、長野分の新幹線もよそで検査する場合には、体制を整える必要があります。



となりますと、北陸新幹線が全線復旧したとしても、走行できる車両は18編成程度と考えられ、単純に計算して約60%の運転本数になってしまう恐れがあります。
時刻表のダイヤも本数が少なくなり、また、指定席の予約も取りにくくなる可能性も大いにあるでしょう。
となると、完全に元に戻るのは1年以上、最悪2年程度かかるかも知れません。

なお、長野新幹線の時代には、東日本のE2系新幹線の車両を使用していました。
2017年にすべてE7系に置き換えられましたが、E2系は廃車が進められており、現在は8両編成が1ないし2編成ある程度のようです。

また、上越新幹線に4編成だけ、E7系が新規投入されており、更に投入数を増やすべく、製造していますので、それを順次北陸新幹線に回して、運転本数を増やす可能性もあるでしょう。
ただし、その分、上越新幹線には穴が開きますし、全部まわしたとしても、4編成分に過ぎません。
東北新幹線など、他の新幹線は、電気の周波数(東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツ)の問題や、軽井沢の急勾配を登れる能力の問題で、運用できません。

満席にて北陸新幹線の予約が取りにくくなると、富山空港・小松空港行きの航空路線も混雑する恐れが出てきそうでして、私の出張にも響きそうです。

なお、JR西日本の白山総合車両所は盛り土した上にあるため、もともと水没のリスクは少ないです。

また、長野車両センターの社員は、センターの安全な場所や近くの避難所へ避難しており、けが人などが発生しなかったのが幸いです。
※その後、36名ほどが取り残されていましたが、救助されたとの情報もあります。



ちなみに、アメリカ空軍は、沖縄に台風が接近しますと、航空機の破損を防止するため、本土の在日米軍空軍基地(横田基地など)に、一時的に、戦闘機やオスプレイなどを「避難」させます。
JR東日本は、計画運休もしていた訳ですので、同様に、新幹線を高架になっている本線上に「避難」させることができなかったのか?
軍隊ができるから鉄道会社も行えとは申せませんが、そのくらい、柔軟に対応できれば、被害金額にしても復旧日数にしても、軽減できたのではと存じます。
ちなみに、今回の台風接近では、日本航空(JAL)も、新千歳空港、関空、中国・九州・ハワイなど様々な空港に事前に飛ばして、航空機を避難させました。

なおJR東日本では、北陸新幹線を繁忙期となる2019年の年末までに従来同等の輸送力回復を目指すと発表しました。
まず、緊急対策として、上越新幹線で廃車予定だったE4系を延命させ、上越新幹線用のE7系(4編成)を、北陸新幹線に転用する方向で検討を進めるとの事です。
上越新幹線では2020年度までに合計11編成を導入し、2階建てE4系を置き換える計画になっています。
このうち10本を、北陸新幹線に回せば、2020年度内で北陸新幹線は通常ダイヤに戻ります。
できる限り、通常に近い状態での運行にならないと、北陸の観光面など、経済に大きな影響が出てしまいますのでね。
ただし、その分、上越新幹線にて、臨時便が無くなるなど、影響が出るのも必須です。

その後JR東日本は、10月25日から、北陸新幹線の列車本数を約8割程度、東京~金沢間の直通列車については約9割の運転本数を確保して、全線再開すると発表しました。

もちろんですが、長野など今回2019年10月の台風19号にて被害に遭われた皆様には、謹んで心よりお見舞いを申しあげる次第です。

台風19号 鉄道被害状況

JR横須賀線では、武蔵小杉駅が冠水し設備が故障しているため、全列車が武蔵小杉駅は通過の対応。(問題の改札を閉鎖して14日より再開)
山梨県のJR中央線、梁川駅~四方津駅と、高尾~相模湖間では土砂崩れ。(復旧のめどつかず、単線にて仮復旧予定)
JR両毛線は、栃木市の大平下駅と栃木駅の間の永野川にかかる線路が土台部分から大きく壊れ、橋梁も破損している被害により長期間運休になる見通し。
JR水郡線では、袋田駅の北側にある「第6久慈川橋梁」が落下し復旧に相当の日数を要する模様で、1年以上かかる見込み。
JR吾妻線は、土砂崩れで長野原草津口~大前駅間で長期間運転を見合わせ。
上田電鉄・別所線でも、上田駅から出てすぐの千曲川に掛かる千曲川橋梁が落下。
更に千曲川の堤防も被害を受けているため、堤防から復旧工事を行い、そのあとに橋の工事となるため、かなりの長期間運休になる見込みで、高校生などの通学にも影響が出そうです。
上田電鉄の鉄道フェスティバルも中止となった。
小田急電鉄は、渋沢駅~新松田駅の間で、線路したの土砂流出と、架線の柱が斜めになったため、秦野駅~新松田間は運休も15日には復旧。
京王電鉄は、線路への土砂崩壊の復旧作業を行い、京王線は北野~高尾山口は14日復旧し、高幡不動~多摩動物公園駅間も仮復旧にて運転を再開。
箱根登山鉄道は、土砂崩れによる橋脚流失や電柱崩壊などで、箱根湯本駅~強羅駅間が長期間運休。

ちなみに関東のJR線では、横浜線が朝9時20分頃、一番に運転を再開しました。

報告する

関連記事一覧

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。