JR北海道の大幅赤字がかわいそう 黒字化を考えてみた

JR北海道

人口減少や少子高齢化、過疎化、高速道路の整備、モータリゼーションの進展などで、地方の鉄道会社を取り巻く環境は厳しくなっています。
JR北海道は10路線13区間のうち、すでに廃線が決まっている石勝線夕張支線に加え、乗客が極端に少ない留萌(るもい)線など4線区について廃止の意向を示しました。

JR北海道廃線

出典:週刊東洋経済

JR北海道の試算によれば、現状の路線を維持し続ければ年間180億円の経常損失が発生し、維持困難な線区のうち7路線8区間だけで今後20年間の維持費用(修繕・更新費用)が435億円かかる計算です。
しかし、そんな維持費用は大変な重荷です。
JR北海道の2017年度(2018年3月決算)での経常利益は、▲199億円です。

JR北海道の赤字

出典:JR北海道サイトより

鉄道収入は836億円に対し、運行するのに1396億円の費用がかかっており、鉄道事業の赤字は年間▲560億円にもなっています。
JR北海道バスも赤字です。
鉄道収入800億円と言う数字は、JR東海(1兆4000億円)と比べると、僅か6%と言う低い売上です。
社長さんの苦悩が脳裏に浮かびます。
労働組合もJR北は強いですのでね。


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ただし、札幌駅の複合ビルなどのテナント料収入やホテル事業など、鉄道事業以外の子会社が年間500億円以上の売り上げを出した頑張りの利益があります。
これで赤字幅を少しは縮めていますが、それでも、連結で▲103億円の赤字です。
JR北海道は、鉄道事業を省けば、優良な企業とも言えます。
最近は、マンション販売も手掛けているくらい、本当に頑張っていますが、運輸業の赤字を補うほどには至っていません。

しかし、2018年度(2018年3月決算)は、車両更新などで過去最大の295億円の安全関連投資を実施するため、連結営業赤字は▲415億円に拡大する見通しです。
そのため、国土交通省は、営業赤字が続くJR北海道に400億円台の経営支援を行うと発表もされています。

国鉄民営化当時から、JR北海道は経営難が予測されていたため「経営安定基金」として国から6822億円(JR北海道の分)を与えられていました。
この基金は有価証券などで運用し、その運用益から500億円をねん出して、赤字を補填しようと考えられたものでした。
しかし、低金利などによる基金運用益は減少しており、国鉄分割民営化時に国が想定した収益水準の半分に満たない236億円まで目減りしています。
すでに予定されていた収入としては、トータルで約5000億円が失われている状態です。
このように、多額の赤字を経営安定基金の運用益で補う構造は限界を迎えています。


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こうしたなか、経費削減に努めているJR北海道では、社員の苦悩も続いています。
給与ベースアップも17年連続で無い模様です。
人員も1万5000人から半分以下の7000人まで抑えて、定期昇給も減らし、人件費を4割削減してきました。
安全に関する投資も抑えたため、特急の列車火災や貨物列車脱線などの事故・トラブルが続発し、更にはレール検査データの改ざんなど事件・不祥事も相次ぎました。
技術者であっても、仕事は老朽化設備の入れ替えばかりで面白なく、かと言って、新幹線の運休や遅延は国レベルの問題に波及するため、業務のプレッシャーが高いと言います。
結果論ではありますが、国鉄民営化の際に、JR北海道を単独で発足せずに、JR東日本としてまとめる政治判断ができていればよかったと存じます。

輸送密度200以上2000人未満の線区は、国鉄時代であれば廃線対象路線です。
JR北海道の輸送密度200人以上2000人未満の線区は、宗谷本線(名寄~稚内間)、根室本線(滝川~富良野間・釧路~根室間)、室蘭本線(沼ノ端~岩見沢間)、釧網本線、日高本線(苫小牧~鵡川間)、石北本線、富良野線の8線区にものぼります。
ただし、JR北としては、宗谷線と石北線は維持したいと表明しています。
もっと利用状況が悪い、輸送密度が200人未満の線区は、留萌線(深川~留萌)、根室線(富良野~新得)、札沼線(北海道医療大学~新十津川)、日高線(鵡川~様似)とあります。

JR札沼線の北海道医療大学駅~新十津川駅間は、2020年4月17日をもって廃止日までの全列車が運休となりました。
廃線跡でのトロッコ運行を構想しているようです。
JR日高線の鵡川駅~様似駅間(116km)は、2021年3月末に廃止になる見込みで、バス転換になるようです。


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JR北海道は、今のままでは、2022年度に200億円程度の資金不足、2023年度に400億円程度の資金不足に陥ると予測されています。
資金不足と言うのは、例えば、電気代を払えないなどの事態となり、最悪、駅は真っ暗、電車の運行もできないと言う事になる可能性があると言う事です。

北海道新幹線

北海道新幹線の赤字も、JR北海道の経営難に拍車をかけています。
2017年度(2018年3月決算)における北海道新幹線(新青森~新函館北斗)の営業収益は96億7900万円でした。
しかし、営業費用(管理費含む)は195億5600万円ですので、営業損益は▲98億7700万円となっています。
新幹線も大幅な赤字の為、JR北海道の赤字を拡大しているのです。
新函館北斗から札幌まで、北海道新幹線が全線開業すれば、多少改善されるでしょうが、工事が終わるのは2030年度と、まだまだ先の話です。

青函トンネルの維持費が高い

青函トンネルは、老朽化の対策に加えて、線路の幅が違う貨物列車と北海道新幹線が走るための三線軌条(3本のレールがある線路)と、通常よりも維持費が大きな負担となっています。
そもそも、普通のトンネルではなく、津軽海峡と言う海の下をとおるトンネルですので、管理・維持には多額な費用がかかります。
北海道新幹線の収入が79億円(2018年度)しかないのに、青函トンネル設備の維持管理費用だけで41億円もかかっているのです。
しかも、JR貨物が支払う線路使用料(北海道全域)として、JR北海道に入る売上は約16億円しかありません。
自社で線路を持たないJR貨物の経営が成り立つように、レールの使用料が安く抑えられているためですね。
ただし、長くて重い貨物列車が走るたびに、線路は疲弊します。
さらには、北国ですので、除雪のための人件費もかさみます。
試算すると、JR貨物からは線路使用料として年150億~200億円程度と頂かないと、JR北海道は線路維持費を賄えません。
でも、そうすると、経常利益が年間100億円のJR貨物のほうが経営が成り立たなくなります。

もっとも、青函トンネルに対しては、2019年と2020年に、国の支援が決定しており、年間50億円くらい拠出される見込みです。
しかし、そのあとは決まっていません。


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JR北海道の中で、一番儲かっている路線は、小樽・札幌から新千歳空港を結ぶ千歳線です。
簡単な話、列車本数をもっと増やせば、更に利便性もよくなり、儲かります。
しかし、新千歳空港駅のホームは6両編成しか止まれず、しかも単線の終点です。
また、通過駅にしなかったので「スーパー北斗」「すずらん」「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」といった優等列車(特急)も止まれないのが現状です。
建設費をできるだけ安く抑えるために、単線・6両と貧弱なホーム設備になりました。
昔の千歳空港駅の時には、現在の南千歳駅が空港の駅で、千歳線の本線上にあり、石勝線の分岐駅にもなっていました。
空港拡大に伴い、その空港の駅が移転したのが現在問題となってしまっています。
しかも、低速で長編成の貨物列車も札幌駅近くまで頻繁に通っています。
ダイヤが過密なところに、低速で長い貨物も走っているので、これ以上、快速エアポートの輸送力を増強する(本数を増やす)ことができず、さばくだけで精一杯となってしまっているのです。
しかし、新千歳空港の利用客も増える予測であることから、新千歳空港駅の路線を複線化のうえ、苫小牧・石勝線方面にも直通運転できるよう改造することが検討されています。
そうすると、昔のように、特急も停車しますので、JR北海道は特急券収入も増える可能性があります。
もちろん、JR北では財源がありませんので、国土交通省にお願いしていると言う事になりますが・・。


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深刻な赤字になっているJR北海道を尻目に、本州、九州のJR上場4社は、そろって2018年3月期の連結決算で売上高・最終利益ともに過去最高を記録しました。

JR北海道は、北海道新幹線・千歳線以外などの一部の赤字路線に関して、線路・車両は地元自治体が保有して管理・維持費用を負担し、運行をJR北海道が担当するような上下分離方式の導入を検討するしかないところまで来ているかと存じます。
札幌市電は、2020年4月から上下分離式となり、線路や車両は交通局、運行と維持管理は公社が行います。
ただし、北海道は広いので、JR線の場合、地元自治体が負担する営業キロも長く、大きな額の負担になってしまうため、簡単な話ではありません。

黒字化対策

少し黒字化の方法を考えてみました。
例えば、東京の小田急は、線路を一部複々線化して、輸送力を増強し、所要時間と混雑度合いを減らしました。
その結果、日本は人口減少しているとは言え、しばらくは沿線に住む人が増えて、増収になると考えています。
しかし、輸送力を増やせないJR北海道では、人口減少も顕著なところもありますし、既存の旅客数を増える施策は、もう期待するのは無理でしょう。

となりますと、JR北海道の鉄道利用客数を増やすためには、やはり、新千歳空港駅の大改修は必須かと存じます。
札幌駅がメインと言う考え方を捨てて、新千歳空港をメインにするくらいの戦略が必要でしょう。
そして、新千歳から旭川・稚内や網走、新千歳から十勝・釧路への特急を充実できると良いですね。

日本人の若者も、クルマの運転免許を持っていない人が増えています。
また、中国人であれば、日本では自動車の運転が認められていませんので、レンタカーも使えません。
となると、空港に降り立つ旅行者は、JR北海道などの公共交通機関で移動する可能性が高いのです。
本州など地方の空港から、釧路・旭川といった空港には航空機路線も無いですので、どうしても新千歳を利用する方が多い訳です。

現状としては北海道新幹線も航空路線に負けていますので、やはり北海道にある既存鉄道路線の利便性を上げるのが得策です。
新千歳で飛行機を降りたあとは、北海道の各地に行くのには、JR北海道に任せてくれ、くらいの気持ちが入ってくると良いのではと存じます。
札幌・小樽行き短距離路線往復の特急があっても良いと思います。
もちろん、紙発券の指定席と言うよりは、JR東日本の新型特急で導入されている、チケットレスの指定席券システムですと、飛行機が新千歳に降りてから、スマホで予約が取れますので、便利な訳です。

もちろん、特急のダイヤや列車編成(車両の数)は、夏季と冬季ではぜんぜん違うくらいで良いかと存じます。
ただし、臨時列車はわかりにくいので、できる限り、固定ダイヤにするべきです。
そして、目的地の近くではJRで素早く移動して頂いて、現地では駅からレンタカーを借りた場合、合計費用的に、新千歳からレンタカーを借りた場合よりも「安く」設定できれば、みんな鉄道に乗って目的地に行くはずです。
下車駅からはレンタルサイクルや、短時間でも安いレンタカーも充実させると、より鉄道利用者も増えるでしょう。
東京と違って駅のまわりには余っている土地もあるでしょうから、充分、実現可能だと存じます。


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高齢者の旅行客向けには、周遊バスではありませんが、列車の終着駅などから観光しながら次の駅を結ぶような、定期観光バス路線もあるとありがたいです。
事前予約制にして、当日は、空きがあれば、あと何名乗れますよと、列車の車内で宣伝もして、ジャンボタクシーでも良いかと存じます。
例えば、釧路駅から釧路ノロッコ号に乗車して塘路駅に降り立っても、結局、往復乗車するくらいの選択肢しかないのです。
でも、行きか帰りをダイヤに合わせてバスがあって、釧路ノロッコ号の撮影ポイントに連れて行ってくれたり、線路からとはまた違う釧路湿原の景色を案内して頂いても良いはずです。
このように、JR北海道の鉄道を利用したその先には、オプションもある状態が作れると、乗客は自然に増えてくるはずです。
地元の観光PRにもなる訳ですので、その内容・投資・運用は、地元自治体に協力してもらえれば、さらに良い訳ですし、JR側で人を出さずに済みます。
しかし、連携は念密に行い、JRも地元も、観光客をもてなすと言う事は必要です。

観光客・旅行者が日帰りで、新千歳から日帰りで周遊できるような観光専用列車(臨時列車)を走らせても良いでしょう。
長万部を周って1周するコースや、富良野を周って一周するコースですね。
可能であれば、北海道新幹線も新千歳空港まで、新線で延長できるとベストと言えます。
函館にも行きやすくなりますのでね。
ただし、残念ながら、足を引っ張っている日高線・留萌線は廃線やむなしかと存じます。

もっとも、JR北海道が資金不足で観光列車を準備できないのであれば、観光地の自治体や旅館組合などが、観光客誘致のための列車を自前で用意して、運行をJR北海道に委託すれば良い話です。
旅館さんなどが行っている「送迎サービス」を発展させ、中古列車でも良いので、改造するなどして少し豪華な列車にし、新千歳空港から最寄り駅まで、送迎も兼ねた観光列車を走らせればよいのですね。
最寄駅から各旅館は、地元のバス会社・タクシー会社などに協力してもらえれば良いですしね。
まさに、上下分離式となりますが、温泉などだけでなく、列車での移動や移動中の自然豊かな景色も楽しめる旅ともなれば、価値を向上できます。


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ただし、通常の定期列車の場合、一番の問題は、指定席券の発売が1ヶ月間からと言う事です。
JR東日本・JR西日本など、他社との兼ね合いもありますので、非常に難しい問題ですが、1ヶ月前の発売では、遅すぎます。
私も、国内の出張は、早いと6ヶ月前には予約します。
すると、JR線は、まだ予約が取れないので、結果的に国内航空を利用する形になります。
もし、6ヶ月前から、北海道新幹線の予約が取れるのであれば、飛行機ではなく、新幹線にしようかと言う選択肢も出て来ます。
しかし、1ヶ月前の発売ですと、もし、予約が取れなかったら、どうしよう?と言う事になってしまい、先に予約が取れる交通機関を使わざるをえないと言う事になってしまいます。
これは、JR北海道だけの問題ではないのですが、1ヶ月前の発売ですと、計画が立てにくくて、困ります。
例えば、北海道新幹線の1車両分の座席だけでも、JR北が「団体貸切」と言う形で、ツアー型販売にして、1ヶ月以上前から、予約受付できないのかな?と考えてしまいます。
余った席は、一般販売に回せれば良いですし、早く売上になければ、資金繰りもラクになりますし、もし、満席になる見込み早くわかれば、臨時増発列車の設定も行いやすい訳です。

まだまだ先の話ではありますが、もっとも、最終的には北海道新幹線の最高速度次第と言ったところです。
新型の新幹線車両にてスピードが320km/hと速くなり、東京から札幌まで4時間30分で結ぶことが出来れば、羽田~新千歳の空路旅客を少し奪える可能性が出てきます。
東京~札幌の航空旅客数は年間900万人と、世界最大の航空需要路線となっており、ドル箱です。
そのうち20%だけでも、新幹線にシフトすれば、年間180万人程度が北海道新幹線を利用すると言う事になります。
そうなると、北海道新幹線は、間違いなくJR北海道における収入の柱になるのです。
ただし、東北新幹線の区間は713kmに対して、JR北海道の区間は360kmと半分ですので、東京からの新幹線収入ではJR北海道よりも、JR東日本のほうが2倍儲かると言う計算も成り立ちます。
現在の整備新幹線の最高速度260km/hに対して、320km/hにUPするための線路改善工事費は、JR北海道が自己負担するほどの覚悟にて考えていますので、320km/hは悲願と言えるでしょう。
青函トンネルにおける、貨物列車との併用も、うまく改善できないと、そもそも、走らせられる新幹線の本数に制限が生じてしまいます。
現在の新幹線160km/hでは、話になりません。
また、新幹線の利用者が増えても、在来線の利用者が増えなければ、当然、赤字体質から抜け出せない可能性もあります。
新幹線は、2030年度末に札幌駅まで開業する予定です。

普段、コンサルもしている小生から拝見しますと、以上のように感じます。


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でも、風光明媚な箇所をいくつも通過する釧路本線は、旅客輸送は終えても、観光路線として臨時列車で良いので残してほしいと感じます。
釧路から網走までの移動手段として、単に走らせるのではなく、1日掛けて、移動できる観光列車として動かせば、人気が出ると思うのですが・・。
時間的に可能であれば、出発した駅に、また戻ってくる日帰りの観光列車ですと、利便性も高いです。
また、例えば、寝台車になっていて、到着した網走駅のホームに止まっている寝台にてそのまま1泊できたら、ホテルを手配しなくても済むので助かったりします。
もし、資金がなかったら、クラウドファンディングでも、どんどん、やったら良いではないですか?

JR北海道の赤字は、北海道にお住いの方だけの問題ではありません。
北海道は日本にとってなくてはならない農業地帯でもあり、農産物などの本州への大量輸送路は、確保しなくてはなりません。
赤字だから、維持費が掛かる青函トンネルは閉鎖しましょうと言う訳にも行かないのです。
そのため、日本全国として北海道のことを、もっと考えてあげなくてはならないと存じます。
国鉄の分割民営化から30年以上たったいま、北海道に限ったことではありませんが、地域の公共交通を誰が支えて守り維持するのか?、考えさせられます。

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